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逃げて勝つのは至難の業!? 凱旋門賞を勝てる脚質は?

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世界最高峰の芝レースである凱旋門賞。その栄誉を勝ち取りたくて当然のように毎年、世界各国からその国のトップホースたちが参戦。今、世界で最も勝ちづらいレースの一つと言っても過言ではないでしょう。

海外馬が走る国際レースではよくある話ですが、ほとんどの馬が未対戦。そのため、どの馬がどんな戦法で来るかを知らないまま対戦することが多いのですが、凱旋門賞でもその傾向は顕著。というわけで、過去10年分の凱旋門賞勝ち馬の脚質を見てみましょう。

16年 ファウンド 差し

15年 ゴールデンホーン 先行

14年 トレヴ 先行

13年 トレヴ 差し→4角マクリ

12年 ソレミア 先行

11年 デインドリーム 差し

10年 ワークフォース 差し

09年 シーザスターズ 差し

08年 ザルガヴァ 追い込み

07年 ディラントーマス 差し

これを見てもわかる通り、凱旋門賞を勝ちやすいのは差し&追い込み馬。4角を6番手以下で回ってきた馬は過去10年で6回凱旋門賞を制しています。4角でマクリを決めて勝利した13年のトレヴを入れたら7回になります。一方で逃げ馬の不振ぶりが顕著で、過去10年で凱旋門賞を逃げて勝った馬はゼロ。最後に逃げ切り勝ちで凱旋門賞を制したのは96年のエリシオ。もう20年以上も逃げ馬が勝てていないことがわかります。

凱旋門賞で逃げ馬が不振というよりも、もともと欧州の競馬は逃げ馬が不利な傾向があります。その理由に挙げられているのは欧州の競馬ではおなじみとなっている「ラビット」と呼ばれるペースメーカーの存在です。

ラビットと言っても、ウサギではなく、ドッグレースに使われるウサギ型のラジコンが語源。獲物になる役を先導させることでイヌの狩猟本能を掻き立てて全力で走らせるのがドッグレースのラビットの役目ですが、馬が走る競馬でもそれは同じ。ただし、草食動物の馬に狩猟本能はないために、あくまで差し馬が走りやすいようにペースを作る役目というのがラビットの仕事です。

ラビットのレースは必然的に逃げ。当然のように勝ちを求められるわけではないだけに、凱旋門賞に出走してくる馬たちよりも能力や実績がはるかに劣る馬が出走してくることがほとんど。ちなみに日本の競馬を定める日本中央競馬会競馬施行規程の第81条に「競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない」と厳正に定められており、仮に同馬主&同厩舎であれ、他馬のために捨て身で走らせるという行為は違反にあたります。

そのため、ラビットは日本競馬では認められていません。あくまで欧州独特のルールというべきでしょう。そして欧州の競馬界では有力馬の陣営が勝たせたい馬のためにラビット役の馬を用意するというのがもはや常識となっています。

そんなラビット役の存在、凱旋門賞での逃げ馬不利を日本の競馬ファンが改めて痛感したのは99年と06年でしょう。どちらも日本から有力馬が参戦し、敗れた年です。

まずは99年。この年は日本からエルコンドルパサーが遠征。現地のレースにも慣れ、フォワ賞を勝利して2番人気にも推されましたが、凱旋門賞では予想外の逃げを打つ羽目に。その理由になったのは1番人気に推されたモンジューのペースメーカー、ジンギスカンの戦略でした。

当初はモンジューをサポートするラビットとして逃げる予定だったジンギスカンですが、自身が逃げてよどみない展開になれば最大のライバルであるエルコンドルパサーの末脚を生かすことになる。そう考えたことであえて逃げずにエルコンドルパサーを前に行かせる作戦を取ります。ライバルを見ながらレースを進めることができたモンジューは結果的に先に抜け出したエルコンドルパサーをゴール寸前で交わして、凱旋門賞を勝利。エルコンドルパサーは半馬身届かずの2着に敗れました。

また、06年の凱旋門賞と言えば、日本史上最強馬と今もなお語り継がれるディープインパクトが出走。この年は少頭数で他陣営もラビット役を用意してくることがなかったためにペース的にはディープインパクト有利に進むかと思われましたが、ディープインパクトは凱旋門賞で逃げさせられる展開を強いられます。凱旋門賞で逃げ切り勝ちを収めた馬が少ない理由として、複雑なコース形態もありますが、同時に欧州の競馬では逃げ馬を捕まえるような差し馬、番手から抜け出す先行馬が圧倒的に有利。

そのため、欧州の騎手の駆け引きで「有力馬を“逃げさせる”」というものがあります。欧州で走った経験がこの時限りだったディープインパクトは見事にこの術中にはまってしまい、直線ではレイルリンク、さらにプライドらに差されるという日本では考えられないような負け方を喫して3位入線に終わります。

こうした経験があったからか、近年では日本から遠征する際にはラビット役を連れて行くようになりました。12年に凱旋門賞に出走したオルフェーヴル陣営はラビット役、さらに遠征時のパートナーとして同じ社台グループのステイブルメイト、アヴェンティーノを帯同馬に選び、フォワ賞、凱旋門賞に出走させました。17年もサトノダイヤモンドが遠征を予定していますが、同馬主&同厩舎のサトノノブレスが帯同馬を務める予定となっています。

あらゆるノウハウを覚えた日本の競馬関係者たち。凱旋門賞を勝てる脚質である差し脚を生かすべく、ラビット役を連れて行ったことがどう出るか…注目が集まります。